電通の個人事業主化の話

 電通が、希望者(40歳以上)を個人事業主にして業務委託するという新制度を発表したことに対して少し話題になっているようです。

電通の場合は対象を40歳以上に限定していること等から穿った見方をされている記事をちらほら見かけます。実際の会社の中がどのような感じなのかは分かりませんが、過労死の事件もありましたし、鬼十則のイメージもありますし、本当に発表されている通りの目的で運用がなされていくのか、本当は別の目的があるのではないかと疑問に感じる方がいるのも理解できます。

しかし、外野が何を言っても、会社と社員が納得の上、両方が幸せであれば何も問題ないでしょう。ちなみに私は、鬼十則からインスパイアされた行動規範を毎日大声で唱和する会社で20代を過ごしましたが、鬼十則は結構好きです。今の時代には合わないかもしれませんが。

 今回、電通の制度が「素晴らしい!」とか「いや、怪しすぎるやろ」といった話ではなく、このような制度を他の会社が導入した場合について少し考えてみます。

 導入のメリットとしては、個人事業主として責任感を持って主体的に働くことによる積極性や能力の向上、また、運用次第では人件費(特に社会保険料)の削減も可能でしょう。残業時間の規制から外れることも可能です。

 しかし、注意点としては、最初は今までと同じ仕事を業務委託するケースが多いようなので、実際の働き方が今までと同様に、会社や上司の指揮命令のもとで働いているなら、それは雇用関係にあるとみなされます。

ということは、会社は個人事業主になった元社員も普通の社員と同じように取り扱わなければなりません。その結果、人件費削減(主に社会保険料)も出来ず、残業時間の規制からも外れることができなくなり、なんのために導入したのかよく分からないという結果になってしまうかもしれません。

ということで、導入する際には、業務委託契約の内容を精査することや、発注側である会社の社員に、個人事業主になった元社員に対し、「今までと同じように業務を命令したり、時間を拘束したりしちゃだめですよ」といった教育も必要になると思います。

 また、どういう社員がこういう制度を利用するかを考えると、

①独立心が旺盛で優秀な人
②独立心旺盛で優秀だと勘違いしている人
③家庭の事情等プライベートな事情がある人
等ではないかと思います。②のケースは放っておくとして、③のケースは問題ないでしょう。

問題は①のケースです。最初は元の会社の業務を請け負うでしょうが、軌道に乗って完全に独り立ちした場合、「元の会社より報酬の良い別の会社の案件をメインでやっていこう!」等という感じになってしまうと、優秀な人を手放してしまうことになります。

優秀な社員が独立しても次々に優秀な社員が入ってくる、または優秀な社員を育てられる良い循環が出来ている会社なら問題ないでしょうが、普通に考えると優秀な人がいなくなると会社としては弱体化しそうな気がします。ということで、導入する際は、残った社員が次々に活躍できるような、健全な新陳代謝を図れる組織の構築も必要になってくると思います。

 このように考えると、社外で働くことによる社員の積極性や能力向上といった目的だと、今回のような制度を導入したほうが良い会社もあるでしょうし、副業を奨励して、少し柔軟な働き方ができる制度を導入した方が良い会社もあるでしょう。

結局、どのような制度を導入するにしても、自社の現状を把握し、成し遂げるべき目的のために、どういう制度が必要かということをしっかり考えることが必要です。働き方改革もそうですが、法律が変わったから、流行っているからと、ただ導入するのではなく(もちろん法律は守らないとだめですが)、自社にとって、何のために、何をどのように導入すれば、どういうメリットがあるのかを現状に即して考えることが重要です。

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