Jリーグクラブの例の件からパワハラを考える

2022年4月から中小企業でもパワーハラスメント防止措置が事業主の義務となります。

そこで、先日のサガン鳥栖での「指導の適正範囲を越えた行為があった」というニュースからパワーハラスメントについて考えてみたいと思います(なお、今回の件がパワハラだったと言ってるわけではありません)。

ちなみに、2019年にはベルマーレ平塚でも大きく報道されましたね。

最初に言っておきますが、一サッカーファンとしてどちらのチームにも、とても好感を持っています。予算規模が少ないにもかかわらずJリーグのトップカテゴリーで頑張っている姿には勇気づけられます。

だって、ちょっと調べてみたら鳥栖市って人口7万5,000人くらいですよ。この環境でのこれまでの実績や今年の結果は本当に凄いと思います。

今回の状況(公表されている範囲で)

では本題に入っていきます。

先日、「サガン鳥栖で、監督が『選手1名に対し、指導の適正範囲を越えた行為があった』ため、3試合の指揮資格停止等の処分になったというニュース」がありました。

簡単にまとめると、ラフプレーをした選手を監督が手で押さえながら足払いをして転倒させたのを、スタッフがクラブに報告してこのような処分に至ったようです。

クラブが発表した内容を見ると、個人的には「そこまで大騒ぎしなくても…」と思ってしまいそうだったのですが、そういうのがダメなんですよね。意識を変えないとダメです(と自分に言い聞かせてます)。

今回の件に関しては、「監督から当該選手への謝罪と当該選手から監督への前向きな発言が交わされ」たらしいので、今後は監督も選手も頑張って欲しいと思います。報告したスタッフの方もクラブ外から先にそういう情報が出てしまうのはまずいので、報告すべき事案だったと思います。

無事に収まったということで、今回の件を例にパワーハラスメントの問題を考えてみたいと思います。

Jリーグのクラブは、監督も選手も雇用関係にあるわけではないと思うので、一般の会社と同じように考えるのは無理があるかもしれませんが、それでもパワーハラスメント防止に関する法律(改正労働施策総合推進法第30条の2)に書かれている内容が参考になると思います。

パワーハラスメントの要件

この法律ではパワーハラスメントの3要素として

  1. 優越的な関係を背景とした言動であって
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

この3要素を全て満たすものとしています。

※ただし、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。

そしてこの法律に基づく指針では、パワハラの具体的内容として次の6つの行為類型が挙げられています。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃 
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害

今回の事例をあてはめてみよう!

今回の件をこれらに照らし合わせてみると、

まずパワハラの3要素としては

  1. 監督なので選手起用等、優越的な関係にはあるでしょう
  2. 詳細は分かりませんが、クラブが適正な範囲を越えていると判断しているので、これも該当すると思われます。
  3. 就業環境が害されるかどうかは微妙かもしれません。プロスポーツ選手が「また足払いされるかもしれないから緊張して思い切ったプレーができない!」とはならないと思いますが、もし本人がそのように主張すれば、これも該当するかもしれません。

次に、具体的な行為類型としては、手で押さえて足を払って転倒させているのだから「身体的な攻撃」に該当すると思います。

ですが、これだけで「はい!パワハラ!やらかしちゃったね~」と判断するのではなく、「該当性を判断するに当たっては、当該事案における様々な要素を総合的に考慮 して判断することが必要」とされているので、一連の状況や経緯、頻度、関係性等々を含めて判断する必要があります。

例えば、監督と選手が普段から足払い等の技を掛け合ったり、軽く叩き合ったりするような関係であれば(そんな関係あるかどうか知りませんが)、パワハラ3要素のうちの「就業環境が害されるもの」という部分はかなり微妙になると思います。

逆に、何度も足払い等の身体的な攻撃が繰り返されているようであれば、ハラスメントだと判断される可能性は高くなるでしょう。

どう指導すれば良いか

どちらにしろ、今の時代はどの業界でも手を出す(今回は足もですが)のは、まずいです。

6つの行為類型にもあるように身体的な攻撃以外にも、様々なことがパワーハラスメントの行為として該当する可能性があります。

こうなってくると経営者や上司の皆さんは

「これじゃ指導なんて出来ないよ~!どうすりゃいいのさ サマータイム・ブルース♪(by KODOMO BAND)」ってなると思います。

しかし、「業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導」であれば基本的には問題ないので、個人的にはここが重要なところだと思います。

今回の件で考えると、きっと「そんなラフプレーしたらダメじゃないか!」ということで、行った行為だと推測します。意図としては分からなくはないです。

ですが適正な業務指示や指導なのかということが重要です。

足払いして転倒させたら「ラフプレーしなくなるのか」又は、「ラフプレーをせずにボールを奪えるのか、効果的なプレーができるのか」という視点で考えると、この行為が適正というのは難しいと思います。

逆に例えば「今日はラフプレーしないように、ボールを奪う練習をずーっとやってろ!」であれば、適正な指示や指導といえるかもしれません。

一般の会社でも、「パワーハラスメントにならないように、どう指導すれば良いか」と考える際には、相手に指示したり指導したりする内容(言葉)が、仕事の向上に繋がるものかどうかを意識することが一番大切なのではないかと思います(これだけを考えとけば良いというわけではありません)。普段からの人間関係といったことも大切ですが、上司の側が良い関係を築けていると思っているだけの場合もあります。
「自分は大丈夫」と思っている人も気を付けてください。

組織としてすべきこと

業種や業界によっては、今までの長年続いてきた文化からパワーハラスメントが起きやすいところもあるようです。

なので、組織を管理する立場の方は、管理職にも一般社員にも研修等を通して教育することも必要ですし、相談窓口を作ったり、ハラスメントに関する姿勢を明確にしたりすることも大切です。

というようなことが2022年4月から中小企業でも義務化されますので少しずつ準備を進めて頂きたいと思います。

ちなみに、職場のセクハラに関しては、業務上必要なケースって多分無いと思うので、問答無用でダメです。

なぜか「自分は大丈夫」と勝手に自信を持っている方や、「誰が言うか、誰に言うかで違ってくるから」と意味不明な理屈をおっしゃっている方、もし、現時点で何も問題になっていないのであれば、今までがラッキーだったと思ってこれからは是非気を付けてくださいね。

パワーハラスメントに関しては、2022年4月から中小企業でも防止措置が義務化されるので、その内容について、あらためてブログに書こうと思っています。